「バイアスとは何か?」そして「バイアスにはどんなものがあるか?」と問われた時、皆さんは答えられるでしょうか?
実は日々の日常生活の中、そして理学療法や作業療法などにおける臨床の場面においても『バイアス』の存在というのはとても大きく、私たちの意思決定や考察を歪める要因になっています。
そこで、この記事では少なからず誰もが一度は経験したことがあるバイアスについてを5つに絞って一覧ご紹介していきます。
バイアスの名称だけ聞いてもピンとこない方も、意味や例を見れば必ず「あるある!!」と頷くはずなので、ぜひ最後までご覧いただき明日からの臨床に活かして頂けたらと思います。
【意味も解説】リハビリテーション場面でよくあるバイアス5選
①早まった一般化
早まった一般化の意味は、「少ないサンプルにも関わらず、それがまるで一般的かのように結論づけること」です。
これは、日常生活の中もしくは理学療法場面においてもよく起きてしまうバイアスの一つです。
実際の例を見てみると、例えばこんなものがあります。
早まった一般化の例
とある学校に勤務する先生(A先生)が、Bというクラスに授業をしに行きました。
すると、そのクラスの中にいる生徒の1人(C君)が授業中終始大声で話したりと授業を妨害するような行為が頻繁に見られました。
これに対して憤りを感じた先生は、授業終了後職員室に戻るとBクラスの担任の先生を呼び止めこう言いました。
Bクラスは授業態度が悪過ぎます!しっかり指導をお願いします!
さて、これが『早まった一般化』と言われるバイアスなのですが、お分かりいただけたでしょうか?
解説すると、Bクラスにおいて授業態度が悪かったのはC君のみであるというのが実態にも関わらず、A先生はたった1人の問題を『クラス全体が悪い』と一般化してしまっているのです。
このように、たった一つの事実しかないにも関わらず、それがまるで一般的な事実であるかのように結論づけてしまうことを『早まった一般化』と言います。
その他、臨床(理学療法・作業療法)のどのような場面で、この早まった一般化が出てくるのかを以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味ある方はこちらをご覧ください。
②確証バイアス
確証バイアスの意味は、「自分に都合のいい情報だけを集め、それにより自己の先入観を補強するという思考」のことです。
確証バイアスが、日常生活をはじめ日々の臨床現場のなかで頻繁に出てくると、意思決定を大きく間違えるということが起こりやすいです。
なぜならば、その意思決定は「自分の興味関心が先行し物事を俯瞰的に捉えられていない可能性が非常に高いから」です。
確証バイアスの例
よくある確証バイアスとして、例えばあなたの親友に好きな人ができたという場面を想定してみましょう。
このとき、その『好きな人』はどんな人かというと、あなたからみると「こいつだけは絶対に止めといは方がいい」というような人だったとします。
あえて極端な例を出すと、法律にバンバン触れるような悪事を働き、暴力を振るうなんてのは日常茶飯事みたいな人ですね。
あなたとしては、大切な親友がこんな人と絶対に付き合ってほしくないので親友を一生懸命説得しにかかります。
ところが、その親友はというと…
あの人は、本当は優しくて、思いやりがあって、料理上手で…
とまぁこんな感じで好きな人の良いところを列挙していくわけです。
これがいわゆる確証バイアスというやつで、自分の好きであるという気持ちを強化するために、ある種無意識的に好きな人の良い部分ばかりに目がいくんですね。
「恋は盲目」なんて言いますが、まさにそんな感じです。
なお、確証バイアスが臨床場面でどのような形で関係してくるかについては以下の記事で詳しく解説しています。ご興味ある方はぜひご覧ください。
③三た論法(三段論法)
三た論法もしくは三段論法の意味は、「異なる2つの前提となる命題から結論となる1つの命題を導き出すこと」です。
医療現場において三た論法的な意思決定や考察がまずい理由。
それは、治療の効果判定を誤って解釈してしまう可能性があるからです。
三た論法(三段論法)の例
目の前に脳卒中によって左半身に麻痺を患っている方がいたとします。
その方に、とある温泉を紹介したところなんと麻痺が緩和しました。ここだけみると、あたかも温泉に効果があったように感じます。
つまり、「温泉に入った→麻痺が改善した→温泉に効果があった」というような解釈ですね。
ところが、この考察には重要な2つの視点が抜けているのです。それが…
- そのほかの要因を考慮していない
- 効果の程度を示す比較対象がない
という点です。
これに関しては、以下の記事で詳しく解説していますのでご興味ある方はご覧ください。
④交絡因子
交絡因子とは、『原因と結果の因果関係に対して間接的に影響する変数のこと』です。
要は、「その結果を招いた原因って見えてないだけで他にもあるんじゃね?」という文章があった場合における『他にも』が交絡因子となるわけです。
こんな風に、「原因と結果」という事実がある一方で、実はその裏でその2つに関連する交絡因子が存在しているにも関わらず気づくことができず、あたかも原因と結果に因果関係があるかのように思えてしまうことを『疑似相関』といいます。
直接的な関連がない2つの事象を、それぞれと関連する第三の要因に気づかずに因果関係があるように見えてしまうこと。
交絡因子の例
「コーヒーをよく飲む人は脳卒中になりやすい」といったデータがあったとします。
この時、「なるほど!コーヒーを沢山飲むと脳卒中になるのか!」と安易に解釈するのはまずいです。
なぜならば、この2つの因子には交絡因子が隠れている可能性が高いからです。
この場合で言うならば、『喫煙』が交絡因子になってきます。
というのも、まずコーヒーと喫煙の関係についてですが、先行研究において「コーヒーをよく飲む人は喫煙率が高い」ことが明らかになっています。
一日にコーヒーを飲む回数は、男性で1.9杯、女性で1.6杯となりました。喫煙者では2.2杯/日非喫煙者で1.6杯/日となっており、喫煙者の方が多くコーヒーを飲むことがわかりました。
NTTコムオンライン「コーヒーとタバコとの相関関係に関する調査結果(NTTコム リサーチ)」を発表
そしてもう一つ、脳卒中と喫煙についてですがこれに関しては、既に多くの先行研究で因果関係が明らかになっています。
このように、「コーヒーをよく飲む人は脳卒中になりやすい」というのは一見それっぽく聞こえますが、実際には交絡因子(喫煙)が関連因子となり得るため、解釈の仕方には留意する必要があります。
なお、リハビリテーション場面における交絡因子とのつながりについては以下の記事で詳しく解説しています。ご興味あるかはぜひご覧ください。
⑤情報バイアス
情報バイアスの意味は、「対象者から必要な情報を得るときに生まれる情報の偏りのこと」です。
情報バイアスには、その中にもいくつか種類があるのですがよくありがちなのが『質問者バイアス』と『報告バイアス』です。
質問者バイアスとは
質問者バイアスが顕著に入ってしまいやすいケースの一つが『アンケート調査』です。
一言で言うならば「質問者が導きたい結論に向かわせる質問構成になっている」ことがあり、これによって正しく情報を集められないケースというのがあります。
要するに、「回答を誘導していないか?」という問いですね。
意外と無意識に回答を誘導してしまっていることがあるので、だからこそ研究などにおいてアンケートを作成する人は、この質問者バイアスを強く意識しておかなければいけません。
そして、可能なら1人でアンケートを作成するのではなく、複数人で作成するのがおすすめです。
なぜならば、管理する目が多ければ多いほど先入観によるバイアスがかかりにくくなるからです。
報告バイアスとは
報告バイアスに関してもやはりアンケート調査の時に起きがちで、ただし今度は『質問者』ではなく、『回答者』の方に生じやすいバイアスです。
どんなバイアスかというと、回答者が「正直に言うとAなんだけどそんな風に思われたくないからBにしよ」みたいに、要は本音よりも一般論的な回答を選択してしまうことです。
皆さんも人生で一度くらいはアンケートに答えたことがあると思うのですが、これやったことないですか?(僕はあります)
アンケートを求められた時って当然自分自身が書いている内容を調査している人に見られるわけですから…
馬鹿だと思われたらどうしよう…
変なやつと思われたらどうしよう…
頭いいやつっぽく思われたい
などなど、いろんな理由が後付けで乗っかってきた状態で答えてしまうことがあるんですね。
そうすると、質問者が回収した時に実態とは異なった結果になってしまう、みたいなことが起きるわけです。
報告バイアスの具体的な解説は、以下の記事で行っておりますので良ければこちらも合わせてご覧ください。
バイアス一覧まとめ
以上が、日常生活もしくは臨床現場にてよく見られるバイアス5選でした。
バイアスというのは、ゼロにすることはすごく難しいです。
しかし大切なことは、「いま自分はバイアスにかかっているかもしれない」ということに気づけることです。
気づくことができれば、それに対するアクションを講じるチャンスができるわけなので、まずは気づくこと。
5つのバイアス、見ればピンとくるものばかりだったと思います。
しっかり、明日の臨床から活かして頂き良い理学療法・作業療法が提供できることを祈っております。
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