【それ、言ったもん勝ちでは?】症例発表時に気をつけた方がいい考察の書き方

リハビリテーション業界において、必ずと言っていいほど行われているのが『症例発表』です。

これは、日頃行っている自分自身の臨床を他者に説明するイベントですが、正直なところ恐らく多くの人が「できればやりたくない」と思っているのではないでしょうか?

その理由は、いくつかありますが中でも多いのは…

・質疑応答で聴衆者から詰められる
・自分の臨床を言葉にして説明することができない
・抄録やレポートを書くことが難しい

こういったものが要因として挙げられます。

特に、『質疑応答で聴衆者から詰められる』というのは、おそらく発表者が一番気になっているところで「しっかり答えられるだろうか?」という不安を持っている人もそこそこ多いかと思います。

そこで今回は、症例発表を行う際にこういった不安が引き起こす一つ陥りがちな点について解説していきます。

症例発表を行う全ての方にご覧になって頂きたい内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

・考察を書くときの論文の使い方が合っているか分からない
・シンプルに考察の書き方がイマイチ分からない

 

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【それ、言ったもん勝ちでは?】症例発表時に気をつけた方がいい考察の書き方

乱暴な考察の書き方(例)

本症例は左被殻出血により右片麻痺を呈し、歩行障害が生じている。◯らは「脳卒中後、歩行障害の要因として体幹機能の低下が関与している。」と述べていることから、本症例においても体幹機能低下が歩行障害の要因であると考える。

こういう考察よく目にするかと思うんですが、この文章を要約するとこんな感じになります。

 FACT(事実)
脳出血後歩行障害が生じている

推論
歩行障害の要因は体幹機能障害が生じているからだ

推論の根拠
◯さんが言っているんだからそうに決まってんじゃん

考察文を読むとなんとなく“それっぽく”書いていてるように見えますが、要約してみるとそこそこ乱暴なのがお分かり頂けるでしょうか?

何が乱暴なのか?

それは、論文だけが一人歩きして目の前の患者様のFACT情報がかなり薄い状態であることです。

この例で言うならば、◯さんが言ってることは一旦置いといて…

「目の前のあなたの患者様の体幹機能の状態って一体どうなってんの?」という、そこですね。

ここがごそっと抜けている状態で、「歩行障害の要因は体幹機能だ。理由は◯さんがそう言ってるからである。」という主張は、もはや論文を見つけて者勝ち、言ったもん勝ちなわけです。

乱暴な考察

考察で論文を用いるときのルール

改めて、ここで考察にて論文を引用する時のルールを抑えておきたいのですが、結論…

“症例発表において論文は根拠に対する『補填』にはなるがメインの根拠にはなりません。メインの根拠になるのはFACT(事実)情報です。”

冒頭に出した例は、まさに論文が自分の主張に対するメイン根拠に据え置かれていたパターンですね。

 主張
脳出血による歩行障害の原因は体幹機能障害があるからである

メイン根拠
(先行研究にて)◯らが「脳卒中後、歩行障害の要因として体幹機能の低下が関与している。」と述べているから

考察において自分の考えを述べる際は、まずは担当した患者様が呈する症状や評価結果といったFACT情報が先にメイン根拠にこなければなりません。

そして、引用論文というのはそれら根拠を下支えする『補填』として用いることで、自分自身の主張を強化することができるのです。

間違っても、この順番が逆になったらいけません。

論文の使い方

ただ一方で、これ自体「頭では分かっちゃいるものの、どうしても論文を引用しまくって主張を固めてしまいたくなる…」という方も一定数いるんじゃないかと思います。

で、「なぜ論文で主張を固めてしまいたくなるのか?」というと、その一つの理由というのが、冒頭でお伝えした『質疑応答で聴衆者から詰められる』というのが背景に薄らあるんじゃないかと僕は考えています。

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恐怖心からくる考察の論文装飾

症例発表を行おうとする時、最もそれを踏みとどまらせてしまう要因は「質問が沢山来たらどうしよう…」や「ここ(詰められたくないところ)指摘されたらどうしよう…」というような不安です。

質問や指摘も1対1で行われるのであれば特になんともないが、それが多くの人の前でとなると話しは別です。

誰だって怖いし不安にもなります。

そして、質問攻めや指摘のオンパレードにならないようにしたいがためにやってしまうのが『論文による武装』です。

自分の臨床に自信のない人が、臨床で行った評価や治療を含めた『自分の考え』をドサっと出してしまうと「指摘が沢山きたらどうしよう…」という不安が先に立ってしまい、それを払拭するために論文という『権威性』のパワーを借りて自分の主張を正当化してしまいたくなるわけです。

要は、虎の威を借る狐状態ですね。

これによって、質問や意見が来たとしても「いやいや論文でこう言われてるから」という逃げ道ができるので、心情としてはやや楽になるんですね。

ただし、この結果として『自分の主張を正当化する論文だけを片っ端から集めまくる』ことが常態化し始めると、自分自身の臨床を見つめ直すという機会が奪われてしまうので、現在ここに陥っている自覚のある人は出来るだけ早めに自分の臨床と向き合うことをおススメします。

ちなみに、こういった自分の考えや主張を支持する情報だけを集めにいくことを『確証バイアス』と言います。

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いまこそ『考える力』が必要

このように考察を論文で武装し、言ったもん勝ちで押し切ってしまう根底にあるのは「自分の臨床が自分の言葉で説明できない」という論理的思考力や問題解決能力などの、要は『考える力』の不足にあると考えています。

あなたが担当患者様と進めてきた臨床は、あなたしか説明することができません。

にも関わらず、その思考プロセスを自分の言葉で言語化せず論文の力で逃げ切っちゃうのはすごく勿体無いです。

最初から、理路整然と主張と根拠をまとめろなんて言いません。

うまくまとめられなくてもいいので、まずは“自分が行ってきた臨床を”丁寧に書き出していくこと。

ここから始めてみてはいかがでしょうか?

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言ったもん勝ち推論は他にも

とまぁ、ここまで「考察を書く時の論文の使い方注意してねー!」という話しをしてきましたが、実はこれに近いことって他にもまだあるんです。

それが、『検証できない理論が根拠として据え置かれているパターン』ですね。

一番よく目にする例で言うなら、『CPGが駆動していないから歩行が〜』というようなやつですね。

で、「これの何がまずいのか?」そして「検証不可能な理論を扱いたい時はどうしたら良いか?」といった話しはオンライサロン『はじまりのまち』で詳しく解説しておりますので、ご興味ある方はぜひご参加ください!

言ったもん勝ち推論

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考察における論文の使い方まとめ

 考察における論文はメイン根拠にはならない

 考察はメイン根拠の補填的な役割があり主張を強化することができる

 考察の論文による武装は自分自身の臨床への自信のなさからくる

 自分の臨床くらい自分の言葉で説明できるようになろう