【腰痛の新常識】腰痛があるからといって体幹筋力が弱いとは限らない

リハビリテーション業界をはじめ、整体・整骨院業界の中でもおそらく最も多い疾患の一つが『慢性腰痛』ではないかと思います。

厚生労働省が示した『2019年 国民生活基礎調査の概況』において、健康についての項目で最も有病率の高い疾患が男性の場合が腰痛であり、女性においても肩こりに次ぎ、2位が腰痛となっています。

また、少し話しは変わって「腰痛によってどれくらいの経済損失が生じているのか?」という視点で見てみると、なんと国内で3兆円という莫大な経済損失を生んでいることがわかります。

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このように腰痛は、日本全体をみてもその罹患割合が非常に高く、かつ莫大な経済損失を発生させている大きな問題の一つと言えます。

だからこそ、日々臨床現場において腰痛患者様のリハビリや治療に携わっているセラピストの皆さんの役割はとても重要です。

科学的根拠に基づき、より良い治療手段を提供することが私たちには強く求められているわけです。

そこで今回は、慢性腰痛に対してこれまで常識とされていた治療手段に関して一つ新たな知見をお伝えしていきたいと思います。

この記事を読めば、多くのセラピストの皆さんが「え!今まで普通にやってた…」という部分が見つかるはずです。

ぜひ、最後までご覧いただき明日からの臨床に生かして頂けたら嬉しいです。

・日々臨床現場で腰痛患者様をみることが多い
・腰痛に対する治療法の新たな知見が知りたい
・「腰痛=体幹が弱い」と信じていた人

 

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【腰痛の新常識】腰痛があるからといって体幹筋力が弱いとは限らない

はじめに〜慢性腰痛あるある〜

さて、従来腰痛に対するリハビリテーションや治療というとどのような手段が思いつくでしょうか?

徒手療法や物理療法、運動療法など様々ありますが、広く一般的な一つの治療手段として『体幹トレーニング』が挙げられると思います。

一昔までは『腰痛がある人は体幹が弱い』というのが広く浸透していて、「ひとまず腰痛患者様は体幹筋力しっかり鍛えてこ!」みたいな意思決定のされ方が加速している時代がありました。

おそらく今でもこういった意思決定をしている施設や医療機関というのは多く、いまこの記事をご覧になっている皆さんの中でもピンとくる人がいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、実は近年この『腰痛=体幹筋力が弱い』という理論が破綻するような知見が少しずつ出てきました。

ひとまず、それらの中から一つ腰痛が生じている時と体幹筋の関係を追った知見をご紹介したいと思います。

腰痛に対するリハビリ

腰痛持ちの人って実は体幹筋活動が大きい

まず、ご紹介したいのがこちらの論文です。

Lumbar and abdominal muscle activity during walking in subjects with chronic low back pain: Support of the ‘‘guarding” hypothesis?Marije van der Hulst,2010

それでは、本論文で明らかになったことを解説していきます。

対象者と除外基準

対象者は、年齢が16歳以上70歳未満で腰痛が3ヶ月以上継続または再発した患者(63名)。

対照群となった人は、過去12ヶ月間で腰痛、脊椎の手術歴、歩行に影響を与える神経障害や筋骨格系の障害がない無症状のボランティアでした。(33名)

対象者から除外された患者は…
・過去3ヶ月以内に脊椎の手術を受けた者
・脊椎の骨折、炎症など構造的な障害や神経根症・腫瘍がある者
・脊椎に重度の変形がある者
・歩行に影響を与える神経系および筋骨格系の障害がある者
となっていました。

研究方法

すごくざっくり研究手法をお伝えすると、被験者全員にトレッドミルで歩行をしてもらい、その際『脊柱起立筋』と『腹直筋』そして『腹横筋』の筋活動を測定しました。

結果

結果ですが、慢性腰痛患者は無症状の対照群と比較して、歩行時に『脊柱起立筋』および『腹直筋』の筋活動が増加することが示されました。

これは、従来から言われていた「慢性腰痛患者様の体幹筋は弱い」というものとは逆行する結果になりました。

慢性腰痛患者の体幹筋

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「腰痛=体幹が弱い」とステレオタイプに考えないこと

今回の結果から、腰痛を持っているからといってあながち全ての患者様の体幹筋が弱いという訳ではないということが明らかになりました。

もちろん、これはシステマティック・レビュー論文などではないので沢山の研究がある中での一つの結果ですが、こういう一般論とは異なるケースもあるということを理解して頂けたらなと思います。

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つまり、疾患(腰痛)からすぐに方法論(How)を意思決定するのではなく、腰痛の背景にある病態を丁寧に紐解いて(Why)、最も有効であろうと思う方法を選んで頂けたらなと思います。

担当する全ての患者様は『あなたがやりたいリハビリ』に興味があるわけではありません。

しっかりと患者様に会う方法をチョイスできるように、僕含め日々研鑽していきましょう。