【筋-筋膜性疼痛を深掘り】筋肉と筋膜が生み出す4つの痛みの特徴

すっごく唐突なんですが。

皆さん、筋-筋膜性疼痛の痛みの特徴って知ってます?

いや、これは質問の精度が悪すぎるすみません。関係ないんですけど、質問力の高さってすごく重要ですよね。いま現在AIが答えそのものを教えてくれたりするわけですが、質問する人間の問い力が雑だと当然アウトプットされる答えも抽象度が高くなりますよね。

というわけで、もう少し精度高く質問し直しますね。

これはどうでしょうか?

  • 筋肉と筋膜、知覚できる痛みの強さってどっちが強いと思いますか?
  • 侵害刺激が大きいほど痛みは強くなると思いますか?
  • 筋-筋膜性疼痛による痛みってどのように出現するか知ってますか?(片側なのか両側なのか)
  • 筋肉と筋膜の痛みの範囲には違いがあるんですが、その違いって知ってますか?

はい、この4つの質問のうち一つでも答えが気になるものがあれば、この記事めっちゃお役に立つと思います。もう、めっちゃ。

今回は、先行研究を参考にしながら上記4つの質問に対して明確にアンサーを出していきたいなと思います。

一つでもピンときた方はぜひ最後までご覧ください。

目次

【筋-筋膜性疼痛を深掘り】筋肉と筋膜が生み出す4つの痛みの特徴

研究の概要

どんな研究かと言いますと、一言で言ったら「健常者の多裂筋と胸腰筋膜に生理食塩水を注入し痛みを誘発する研究」です。

これ、被験者にとってはそこそこ鬼畜じみた研究でして、生理食塩水を痛み物質の代わりにして筋膜と筋肉、痛みの出方にどのような違いがあるかを調べたんです。

先生

生理食塩水を痛み刺激の誘発として使う研究は結構多いんじゃ。

補足点としては、「生理食塩水の量」ですね。

一気にドバッと注入するわけではなく、最初は50μl、次に200μl、最後に800μlと3回に分け注入量を増やしていきました。

お分かりかもしれませんが一応補足しておくと、「注入量を増やす」イコールこれは「痛み刺激を強くしている」ということです。

きんたろーInstagramより引用

では、早速結果を見ていきますね。

結果① 侵害刺激の量と痛みの強さの関係

この研究で分かったことの一つ目。

それは、生理食塩水の注入量が多いほど痛みが強くなりやすいということです。

この図がこの後もちょいちょい出てくるので、サクッと解説をすると縦軸が『痛みの強さ』、横軸は『経過時間』です。

見ると、生理食塩水800μlでは、痛みの強度が最も強く次いで200μl、そして最も痛みの強度が弱いのが50μlであるという事がお分かり頂けるかと思います。

つまり、侵害物質、ひいては侵害刺激が強いと痛み強度は強くなりやすい傾向にあるという事ですね。

これを聞くと、「そりゃそうだろ」と思われるかもなんですが、実はここすげぇ重要なところなんです実は。

後ほど解説するので、今はヒントだけお伝えしますね。

「侵害物質の量が多ければ、もしくは侵害刺激が大きければ痛みもそれに応じて強くなる」

はい、もしこれが正解であるとするならばみなさん。

この図を見てちょっと「あれ、なんかおかしいぞ?」と思うことありませんか?

そう、あるんです。この謎はこの後回収しますのでちょっと考えておいてくださいね。

結果② 筋肉に比べ筋膜の方が痛みの強度が強く継続時間も長い

二つ目がこちらです。

赤マルが『筋膜』で青マルが『筋肉』です。

図を見ると、50、200、800μl全てにおいて痛みの強度は「筋肉に比べて筋膜の方が強い」です。

そして、痛みが鎮静化する時間についても「筋肉に比べて筋膜の方が長時間続く」傾向にあります。

この知見を臨床現場に抽象化すると、筋肉実質の痛みを訴えている人よりも筋膜由来の痛みを訴えている方の方が痛みの強度と発生からの時間が長時間に及んでいる可能性が高いという事が言えます。

「痛みの表出のされ方」については、この後お伝えしますのでそちらも併せてご覧いただくと、より筋-筋膜性疼痛による痛みの特徴が抑えられるかと思います。

【重要】侵害刺激の大きさ=知覚する痛みの強さとはならないっぽい

はい、それでは先ほど問題提議したなぞなぞを回収しますよ。

これです

先ほど、生理食塩水が800μl注入された場合の方が痛みの強度も強く50μlは最も強度が低いという結果を示しましたよね。

「痛み刺激の量が多いほどそれに応じて痛みの強度も強くなる」

これは古からの言い伝えなのかなんなのか、恐らく多くのセラピストの皆さんがこの一文を見た時疑問に感じる方は少ないと思います。

セラピスト

痛み刺激が多いほど、痛みが強くなるって当たり前じゃね?

ただですね、もしこの一文が正しいとするならばこの図、ちょっとおかしな点があるんです。

それは、「生理食塩水50μlから200μlの痛み強度の変化量と、200μlと800μlの時の痛みの強度が釣り合わない」という点です。

ちょっと以下の図をご覧ください。

実際、この研究では50μlと200μlの時の痛みの強さは筋肉で約3倍筋膜で約2倍痛みが強くなったことを明らかにしました。

しかし、一方で200μlと800μlの時は、「800μlで“僅か”に痛みが強くなる」という結果を示したんです。

え、これめっちゃ面白くないですか?

この知見を臨床へ抽象化すると、何が言えるか。

それは、「侵害刺激の量そのものが自覚できる痛みの強さを決定しているわけではない」ということです。

僕らは教育上、「痛み刺激=痛い」というある種反射-反応理論にどっぷり浸かったような痛みの概念を学びますが、実際のところ痛み刺激の量そのものが痛みの強さを決定づけているわけではないんですね。

だからこそ、患者様が呈する痛みを追うときは、外部から観察できる患部の状態だけではなく、多面的に評価していくことがすごく重要になってくるわけです。

結果③ 筋-筋膜性疼痛による痛みは病側に寄る傾向にある

ここからはより臨床に直結する話しなので、一つ一つ丁寧に理解していってくださいね。

今回、生理食塩水を注入していったときどこに痛みが出現したかというデータを取ってるんですね。

その結果わかったことが、「誘発された痛みは常に注射側に位置していた」ということなんです。

この結果が臨床にどのような影響を与えるかというと、それは…

筋-筋膜性由来の腰痛の場合、痛みは罹患側のみで出現する可能性が高く、もし痛みがベルト様に訴える場合はその他の要因が関与している仮説が想像できる。

ということですね。

セラピスト

ベルト様に痛みを訴えているケースってどんな人?

腰痛がベルト様に出現するケースはいくつかありますが、一つ例を挙げると『痛覚変調性疼痛』が挙げられます。

痛覚変調性疼痛とは、主に中枢神経系が正常に機能していないために生じる疼痛のことです。

通常私たちが痛みを感じるのは、怪我や炎症などの外的な因子が原因となる事が多いですが、痛覚変調性疼痛の場合は下降性疼痛抑制系をはじめとする神経系が正常に働かないために生じる痛みです。

これは今まで心因性疼痛と言われていた領域なんですが、2020年に国際疼痛学会が名称を変更しました。

先生

炎症など、外的な要因で説明できない痛みを今までであれば「心因性だ」と心の問題に投げていたんじゃが、脳科学の発達によってそれら原因不明の痛みが、大脳皮質をはじめとする神経系の問題によって痛覚が変調した結果生じるということが分かり始めたんじゃ。

痛覚変調性疼痛の場合、痛みは患部に限局しているという事が少なく、むしろその範囲がぼやっとしている事が多いです。

よって、痛みの範囲が患部片側に限局化されているのか、それとも全体に広がっているのか、この辺りを評価することできん筋-膜性疼痛と痛覚変調性疼痛をスクリーニングすることが可能になってきます。

きんたろーInstagramより引用

結果④ 筋実質と筋膜の痛みの範囲が違う可能性がある

それでは最後です。

実は、筋肉そのものと筋膜が出す痛みの範囲は侵害刺激の大きさによって異なることがこの研究から明らかになりました。

まずは以下の図をご覧ください。

きんたろーInstagramより引用

弱い刺激(50μl)を与えた場合

筋膜に弱い刺激(50μl)を与えると、痛みの範囲はどちらかというと限局化されます。(図で言うと赤の範囲)

一方で、筋肉では痛みの範囲が筋膜に比べて大きくなります。(黄色の範囲が大きい)

つまり、侵害刺激が弱い状況下においてピンポイントで痛みを訴えている場合には筋膜の可能性が、片側にぼやっと広く痛みを訴えている場合は筋肉がその原因として考えられます。

ただ、これはあくまでもスクリーニングなので詳細な評価はもちろん必要ですよ。

強い刺激(200μl)を与えた場合

筋膜と筋肉に強い刺激(200μl)を与えた場合どうなったかというと結論、逆になりました。

上の図を見ながら読んでね

筋膜に200μlの生理食塩水を注入すると、痛みの範囲がボワっと広がったんですね。(50μlの時に比べて黄色い範囲が増えた)

逆に、筋肉の方はどうかというと、むしろ黄色い範囲が減って痛みが限局化したんですね。

つまり、強い侵害刺激が加わっている場合に痛みが限局化している場合には筋肉がその原因として考えらえる。みたいなことが示唆できそうです。

筋肉と筋膜の痛みの特徴まとめ

さて、以上が先行研究を参考に示唆できる筋肉と筋膜の痛みの特徴4つです。

「痛みの原因として筋-筋膜性疼痛ってあるよね」

くらいは周知の事実だと思いますが、どの様な痛みの特徴があるかと言うのはあまり知られていないので、今回の記事を参考に日々の臨床に活かして頂けると嬉しいです。

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きんたろー

主に『臨床推論』と『痛み』、『脳卒中』に関する内容について講義してるよー!

参考文献

Dose-Dependent Pain and Pain Radiation after Chemical Stimulation of the Thoracolumbar Fascia and Multifidus Muscle: A Single-Blinded, Cross-Over Study Revealing a Higher Impact of Fascia Stimulation.Vogel S,2022

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