この記事では、骨格筋の解剖学&生理学的な特徴について分かりやすく解説していきます。
理学療法士や作業療法士はもちろん、柔道整復師や鍼灸師といった資格試験においても頻出問題となっているところだと思いますので、ぜひ最後までご覧いただきその特徴を理解していきましょう。
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【解剖生理学を極める】骨格筋の特徴と収縮-弛緩について分かりやすく解説
骨格筋の中にある組織一覧
基本的に骨格筋内の筋繊維というのは、多くの結合組織に包まれている状態です。
まず、一つの筋繊維は薄い結合組織の膜である『筋内膜』に包まれています。
そして、筋内膜に包まれた数十〜数百の筋繊維が束になったものを『筋束』といいます。
骨格筋の構造単位の一つで、複数の筋繊維(筋肉の細胞)が束になって形成された構造体。
※『筋繊維束』ということもある
で、この筋束もまた結合組織に包まれていてその膜のことを『筋周膜』といいます。
最終的にいくつかの筋束がセットになり、そのセットを『筋上膜』が包み一つの骨格筋が完成します。
この辺、なんとなく『大きなカブ状態』になっているので、順序立てて覚えないと結構ごっちゃになりやすいです。
特に理学療法士や作業療法士学生の皆さんは一度くらい悩んだ経験がないでしょうか?
筋繊維を覆う膜が『筋内膜』、筋繊維が集まった筋束を覆うのが『筋周膜』、いくつかの筋束をギュッとまとめ覆うのが『筋上膜』じゃ。
なお骨格筋内には、紹介した結合組織だけでなく『血管』や『神経』なども含まれているので、ここも併せて抑えておきましょう。
筋繊維の構造
身体にある骨格筋によって筋繊維自体の特徴は様々ですが、基本的にその長さは2~5㎝、太さは30~100μmであることが多いとされています。
筋繊維をもっとミクロで覗いてみると、これは筋原繊維という組織になっています。
筋繊維の太さが30~100μmなのに対し、筋原繊維は1~3μmなのでその小ささというのがわかるかと思います。
筋原繊維をよく見ると模様に特徴があり“横紋様”となっています。
骨格筋のほとんどが『横紋筋』と呼ばれる所以となっているところですね。
この横紋様の正体ってなんなの?
筋原繊維における横紋様の正体、これは『アクチンフィラメント』と『ミオシンフィラメント』という筋フィラメントが交互に織り混ざっているからです。
太いフィラメントが『ミオシン』、細いフィラメントが『アクチン』じゃ。
ちなみに、よく国家試験等で問われる部分なので一応説明しておくと…
アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが重なり合う部分を『A帯』といいます。
上図で言うと、『A band』と書かれてあるところじゃ。
ミオシンフィラメントしかない部分を『H帯:H zone』、アクチンフィラメントしかない部分を『I帯:I band』といいます。
そして、I帯の中央部分に『Z帯:Z line』があり、このZ帯とZ帯の間を筋節と呼びます。
筋収縮と筋弛緩のメカニズム
1 筋収縮
筋収縮のメカニズムって、いくつか説があるのですがここでは最も有力な『滑り説』で解説していきたいと思います。
大脳皮質の一次運動野から皮質脊髄路を通して運動神経に投射する。
運動神経に大脳皮質からの運動指令が届くと、神経末端からアセチルコリンが放出され、筋繊維側にあるアセチルコリン受容体と結合する。
ちなみに、この運動神経と筋繊維の境目を『神経筋接合部』という。
アセチルコリンを受け取った筋繊維はナトリウムイオンとカリウムイオンで調整されている筋細胞膜の透過性が変化し、脱分極を引き起こす。
筋繊維に脱分極が起こると、筋小胞体からカルシウムイオンが放出される。
筋繊維内のカルシウム濃度が上昇すると、カルシウムイオンはアクチンフィラメント上にあるトロポニンと結合する。
カルシウムイオンがトロポニンに結合すると、アクチンを取り巻いているトロポミオシンが外れる。
トロポミオシンが外れたアクチンに対して、ミオシンが結合しクロスブリッジを形成、筋収縮が生じる。
ちなみに、筋収縮が起きるとZ帯とZ帯の距離は短縮する。
以上が、筋収縮のメカニズムになります。
このように、筋繊維が興奮してから筋収縮が生じるまでの一連の反応を『興奮収縮連関』といいます。
2 筋弛緩
筋弛緩のメカニズムを以下に示します。
運動を止めようとすると、当然大脳皮質からの運動指令が止まるわけでなので神経線維からのアセチルコリン放出もストップする。
アセチルコリンの放出が止まると、トロポニンに結合していたカルシウムイオンが外れ筋小胞体へと帰っていく。
カルシウムイオンが筋小胞体に帰っていくとトロポニンが作動、トロポミオシンが再びアクチンを取り巻く。その結果としてミオシンがアクチンから外れクロスブリッジが解かれる。=筋弛緩
筋繊維のタイプ
骨格筋を構成する筋繊維は、その収縮形態から『遅筋線維』と『速筋線維』に分けられます。
遅筋繊維は収縮速度が遅い一方で持久力に富んでいるという特徴があります。
逆に速筋線維は、収縮速度や収縮力に優れていますが持久力に乏しいという特徴があります。
遅筋線維はマラソン選手に多く、速筋線維は短距離走の選手に多いと考えると覚え易いぞ!
また、これら筋繊維はATPase活性の違いによって、活性が低い『タイプⅠ』と活性が高い『タイプⅡ』に分けられます。
ATPaseの活性が高いとそれだけ「強い筋収縮が生み出せる」と考えることができます。
先ほど筋収縮のメカニズムの部分では述べませんでしたが、筋収縮を起こすにはエネルギーとなるものが必要で、そのエネルギーというのが『ATP』なわけです。
で、このATPというのはADPと3つのリン酸から構成(ATP=アデノシン三リン酸)されており、実際に筋収縮が生じる瞬間にはATPがADPとP(リン酸)に分解する時に生じるエネルギーを利用しているのです。
話しを戻します。
タイプⅠはATPase活性が低いので、つまりこれは『遅筋線維』のことを指していて、逆にタイプⅡはATPase活性が高いので『速筋線維』のことを指しているわけです。
さらに、ちょっとここからが複雑なんですが、タイプⅡ線維はさらに2つに分けられます。
有酸素性代謝能力を持つタイプを『タイプⅡA』、有酸素性代謝能力を持たないタイプを『タイプⅡB』といいます。
あと筋繊維のタイプの話しで有名どころは『色の違い』じゃな。遅筋繊維を『赤筋』、速筋繊維を『白筋』というぞ。
以下に、筋繊維のタイプの違いを一覧にまとめたのでご覧ください。
色 | 赤筋 | 赤筋 | 白筋 |
収縮特性 | 遅筋 | 遅筋 | 速筋 |
ミオシンATPase | タイプⅠ | タイプⅡA | タイプⅡB |
ミオグロビン量 | 多い | 多い | 少ない |
収縮速度 | 遅い | 速い | 速い |
疲労 | 遅い | 中間 | 速い |
グリコーゲン含有量 | 少ない | 中間 | 多い |
ミトコンドリア量 | 多い | 多い | 少ない |
毛細血管の数 | 多い | 多い | 少ない |
ミオグロビンとは、筋肉の中に含まれる色素タンパクのことである。ミオグロビンの量が多いほど赤くなることから赤筋や白筋と色で筋肉を区別することができる。
なぜ、遅筋線維にはミトコンドリアが多くて速筋線維には少ないの?
この理由は、『ミトコンドリアの機能』が分かれば理解できると思うぞ。
ミトコンドリアの主な機能は『ATPの産生』です。
先ほどの復習ですが、筋収縮を起こすためにはそのエネルギー源となる『ATP』が必要でした。
つまり、そのATPを生産しているミトコンドリアが減れば物理的に筋収縮ができなくなるわけです。
そして、遅筋線維というのは持久力に富む筋線維であることから、ミトコンドリアを大量に含みエネルギーが枯渇しないような構造になっているわけです。
瞬発的に負荷が強くかかるトレーニングをしたら早々に筋疲労が起き力を出しにくくなると思うが、あれは白筋線維に含まれるATPが枯渇してしまうからなんじゃ。
筋繊維に対する神経支配と運動単位
骨格筋の運動機能発現の基本単位を『運動単位』といわれ、一つの運動神経は複数の筋繊維を支配しています。
一つの神経が一つの筋肉を支配していると思いがちじゃが、実はこれは違うんじゃ。
運動単位には、収縮特性の違いから大きく3つのタイプが存在しています。
- S型
- FF型
- FR型
S型の特徴
単収縮開始から最大張力に達するまでの時間は長いが収縮による疲労は少ない
FF型の特徴
単収縮開始から最大張力に達するまでの時間は短いが収縮による疲労が大きい
FR型の特徴
S型とFF型の中間
これら3つの運動単位のどれかに属する筋繊維は全て同様の収縮特性を持っています。
つまり、上記特性と先ほどお伝えした筋繊維のタイプを踏まえると…
S型の運動単位に含まれる筋繊維は『タイプⅠ型』、FF型の運動単位に含まれる筋繊維は『タイプⅡB型』に対応していると言えます。
一つの運動単位に含まれる筋繊維の数のことを『神経支配比』といいますが、これはS型<FR型<FF型の順多いとされています。
また、随意的に収縮運動を起こす際にはS型から先に動員され、その次にFR型、最後にFF型が動員されると言われています。
骨格筋の特徴まとめ
以上が骨格筋の解剖学そして生理学的な特徴でした。
特に収縮や弛緩といっ生理学的な部分については理解に躓く人が多いかと思いますので、ぜひ繰り返しご覧になって頂き理解を深めてもられると嬉しいです。
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