臨床推論のプロセスと反証可能性について分かりやすく解説

きんたろー
こんにちは、理学療法士のきんたろーです。

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『臨床推論』は、理学療法士や作業療法士をはじめ、柔道整復師や鍼灸師といった日々『医療』や『施術』の現場に携わっている皆さんであれば、必ず行っている営みの一つであると思います。

しかし、実際この臨床推論を進めていくにあたっては、典型的な落とし穴がいくつか存在しており、実は多くの方がこの落とし穴にはまっているケースをよく見かけます。

そこで今回の記事では…

・臨床推論を行う上でマストである『仮説-検証作業』とは何かについて理解する
・仮説検証作業を行う上で大切な『反証可能性』という営みについて理解する

本記事を読み終えた時には、この2つの点がきちんと抑えられる状態となっていますので、ぜひ最後までご覧いただき『臨床推論』に関しての理解を深めていきましょう!

臨床推論のプロセスと反証可能性について分かりやすく解説

臨床推論という営みを一言で簡単にまとめると、「目の前にある情報を元に仮説を仮説を立て、それを検証していく」ということになります。要は、『仮説-検証作業』ですね。

仮説-検証作業とは

さて、「そもそも仮説-検証作業って一体なんなのか?」というところに疑問を感じる方もいるかと思いますので、はじめにこの部分の解釈について足並みを揃えておきたいと思います。

仮説の真偽を、事実情報に基づいた実験や観察などを通じて確かめること

と、一般的にはこのように定義されていますが、ここで押さえておきたいポイントが一つだけあります。

それが《仮説は事実ではない》ということです。

冷静に考えたら、「そりゃそうだよね」となりそうなんですが、ここって結構見落とされがちなところでして…

繰り返しですが、仮説はあくまで仮の答えでしかなく事実ではありません。

よって、仮説は検証まで行って初めて成立するのです。(つまり仮説-検証作業)

臨床推論を行っていく際によく間違った例としてあるのが、推論が仮説段階であるにも関わらずそれがあたかも『正解だろう』と、検証しないまま事実と認識してしまうことです。が、これではまだ仮説検証作業は終わっていません。

『仮の答え』を『事実』にするためには、必ず『検証』する過程を踏まなければならないからです。

仮説-検証作業を行う際に必要な反証可能性という視点

このように、仮説検証作業は仮説の立案と検証の両輪で成り立っているわけですが、この営みを行う際に一つ気をつけなければならないことがあります。

それが、『バイアス』というものです。

『バイアス』とは思考の偏りのことで、仮説-検証作業をする際最も生じやすい問題の一つです。

このバイアスが仮説-検証作業にふんだんに組み込まれてしまうと、本来考えるべき事実が大きく歪んでいやすく、だからこそこの時持っておきたい視点というのが『反証可能性』という考え方です。

反証可能性とは

『反証可能性』という概念を最初に唱えたのはカール・ポパーという方で、彼は…

 

カール・ポパー
科学は常に反証される可能性がある

 

と述べており、これはどういうことかというと…

現時点で定説となっている科学的根拠も常にひっくり返る(覆る)可能性を秘めている。ということです。

そもそも、『反証』とは何かというと…

仮定的な事実や証拠が真実でないことを立証すること。そのための証拠を探すこと。

というように定義されていますが、これだけだと何を言っているのか分かりませんよね。ちょっと噛み砕いて言語化するとこんな感じです。

『こうじゃないか?…』という自分が立てた仮説に対して、あえて「そうではない(反証)」という証拠を探すこと。

つまり、自分が立てた仮説に対して「本当にそうなのか?」と一旦冷静に疑ってみる、ということですね。

この一連の作業を『反証作業』といいます。

なぜ、臨床推論の中で反証作業をする必要があるのか?

この理由は、一つです。

できる限りバイアスを取り除くため

研究の分野においては、もっと深く多くの意味が込められていると思いますが、少なくとも私自身が臨床において反証作業を大切にしている理由はこれに尽きます。

少し、臨床の話しで例えながら反証作業の役割について解説していきます。

例えば『症状Aの原因はBだろう』と、仮にこのような仮説を立てたとしましょう。

そうすると、この後とるべき理想的な行動は「本当にそうなのか?」つまり「症状Aの原因がBなのか?」を検証するアクションを取ることです。

しかし、ここで出てくる厄介なものが『バイアス』です。

というのが多くの場合、自分自身が立てた仮説というのは、「正しいはずだ」と、信じたい心理が働いてしまい、無意識に自分の思い通りの方向に進めたくなるからです。

自分の思い通りの方向に進めたくなるとは、例えば以下のようなものをいいます。

・症状Aの原因がBと決定づけるような検査のみ行う。

・症状Aの原因がBとならない評価結果が出ると、なかったことにして推論を進めてしまう。

・症状Aの評価を行う時に『出て欲しい結果』に誘導したやり方をしてしまう。

これをやってしまうと、患者様本来の病態が歪んでしまい、結果『患者様に必要なリハビリ』ではなく、『自分のやりたいリハビリ』になってしまう可能性がとても高くなります。

故に、これを避けるために『反証作業』という手続きを踏むことで自分の思考に偏りを生まないようにすることが出来るのです。

反証作業を行う際に持っておきたいマインドセット

では、臨床で反証作業を行う際にはどういった思考やマインドをもっていなければならないのか。最後に、この点についてお伝えします。

先程の例である、「症状Aの原因はBだろう」でいうと…

・仮説Bを否定する評価を行ってみる

・仮説Bを否定する結果がでたらきちんと向き合う

・仮説B以外の仮説(C.D.E)を考える

ざっくりですが、大きくはこのような視点が必要であると考えています。要は、批判的吟味をするということですね。

特に、臨床推論を行っていく中でバイアスにかかりやすい典型例としては『仮説の量が少ない』ということが挙げられます。

なぜならば、例えば仮説がたった1つしかなければ、それが外れた場合にはもう考える余地がなくなって思考がフリーズしてしまうからです。

そのため、仮説の量が少ないとどうしてもその仮説を正解に導きたいという心理が働きやすくなるのでバイアスがかかりやすくなってしまいます。

だからこそ、その対策としては上記の3つ目に挙げている『他の仮説を考える』、つまり仮説の絶対量を増やすというは思考の偏りを避けるためにはとても重要なことであると思います。

臨床推論を行う中で仮説の量を増やすための方法

「臨床推論を行っていく中で仮説の量が少ないとバイアスがかかりやすくなるから、沢山仮説を考えましょうー!」

と、口で言うのは簡単ですがそう簡単にはいきませんよね。なぜならば、仮説を立てるためにはそれなりの『知識量』が求められるからです。

そうなると、当然日々勉強していく必要があるのですが、とはいえ自分1人の頭のキャパシティでは乗り越えられない事だって当然ありますし、全くの専門外で知識が足りない事だって臨床を行っていく中ではよくあります。

だからこそ、そんな時にどんどん行っていただきたいのが『症例検討会』です。

本来、症例検討というのは『改善したorしてない』という事を話し合う会ではなく、1人では到底思いつかない仮説を他の人の頭(知識)を借りることで仮説の絶対量を増やすことにあると僕は思っています。

ただし、この症例検討会を行う際にはやり方でちょっとした注意点もあったりするので、それに関しては以下の記事に詳細を書いていますのでご興味ある方はこちらをご覧ください。

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臨床推論における反証可能性についてのまとめ

以上が臨床推論の中で意識しておきたい『反証可能性』の考え方です。

臨床を行っていると、どうしても自分の意図したい方向に推論を結びつけやすくなってしまうことがありますが、それでは論理に飛躍が生まれたり、本当の原因を見誤ることがあります。

だからこそ、臨床推論を進めていく際には『反証する』という思考の癖を何処かに持っておくことで、バイアスで曇ったメガネを取り外し推論が組み立てられると思います。

ただ一方で、ここまですごく簡単に反証可能性や反証作業の事を話してきましたが、実際に臨床でこの作業(仮説-検証作業)を実践する場合は非常にしんどいです。

というのも、ここまで読んでいてなんとなく感じた方もいるかもしれませんが、反証可能性とは詰まるところ自分の考えを一旦否定する作業だからです。

自分の考えを否定するというのは気持ちの良いことでは到底ありません。

だからこそ一人で解決しようとするのではなく、色んな人の頭を借りディスカッションを通して正しく臨床推論が進められると素晴らしいと思います。

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