徒手療法で姿勢や身体の構造を変えることはできるか?

きんたろー
みなさん、こんにちは。理学療法士のきんたろーです。

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さて、この記事を読んでくださっているセラピストの皆さんの中で、『徒手療法(マッサージや筋膜リリースなど)』を治療手段の一つとして日々の臨床現場で用いている方はいらっしゃるでしょうか?

では、その中で「用いている」と答えた皆さんへ一つ質問です。

 

使用している徒手療法の目的はなんですか?

 

この問いに対する答えは「鎮痛のため」だったり、「矯正のため」だったり、もしくはそれ以外だったりと。

徒手療法を用いているその目的は、(どのような手技かも含めて)セラピストによって多岐にわたると思います。

ただ、実を言うと現在まで…

種類が豊富な徒手療法の効果というものを、一つ一つ吟味している研究というのはあまり多くありません。

その結果、実情として「その手技本当に効果あんの?」という部分において、ややブラックボックス化されている部分があったりします。

そこで、今回は…

『徒手療法は何に効いて何に効かないのか?』という問題を明らかにしていくための一つの切り口として、2011年に海外で行われた学者同士の討論会の内容を解説していきたいと思います。

この討論会で取り上げられたテーマは…

徒手療法って、姿勢や身体の構造を変えることってできんの?

です。ピンとこない方も中にはいるかもしれないので、代表的なやつを出すと例えば、『骨盤矯正』とかですね。

要は、「セラピストの徒手だけで骨盤の構造を変えることができるのか?」的な話しです。

では、前置きはここまでにしておいて、本題に入っていこうと思います。

徒手療法で姿勢や身体の構造を変えることはできるか?

Lederman博士の主張〜姿勢-構造-生体力学モデルへの批判〜

近年、徒手療法に対して批判的な意見が挙がってきていますが、この討論会に登壇したEyal Lederman DO PhD教授はそういった批判者の一人です。

ただ、彼は徒手療法そのものを否定しているのではなくって、『姿勢-構造-生体力学(PSB)モデル』というものに対する批判者の1人です。

彼は、腰痛に焦点を当て…

腰痛と姿勢・構造・生体力学的特徴の間に信頼できるよ根拠はなく、そのような特徴を治療し正常化する試みは無意味であり、時間と資源の無駄である。

と、かなり極端かつ尖った主張をしています。

加えて、Ledermanはこう断言しています。

我々はもはや、ずれた構造を再調整したり、修正したり、バランスを整えたりするための手技の使用を正当化することはできない。つまり、リハビリテーション戦略、運動再教育アプローチ、行動に焦点を当てた方法論こそが、腰痛のような機能不全状態の解消と予防を達成するための最良の手段であり、徒手療法にはせいぜい短期間の効果しかなくほとんど冗長である。(Lederman, 2010)

このように、Lederman博士の主張はかなり尖っていると言いますか…一見反感を買いそうな主張っぽく見えるんですが、一方で実は彼の主張に賛同する人たちというのも一定数存在していて、例えば以下のようなものです。

徒手療法のみで姿勢やバランス、可動性(筋膜を含むより正常な可動域)、持久力が正常な機能を達成することははるかに困難である。(Irvin et al., 2007; Chaitow, 2010)

Lederman博士は、これら徒手療法が姿勢や構造の変化に寄与しないという考えを提示することで、多くの理学療法士、整体師、カイロプラクター、マッサージセラピストの皆さんが実践していることの根幹部分に対して異議を唱えています。

Lederman博士の主張〜結果ではなくプロセスを改善することが大事〜

Lederman博士が臨床において成果を出すために必要だと考えていること。

それは、プロセスを改善することだそうです。

これはどういうことかと言いますと、例えば『腰痛が発生した』となった場合、この腰痛というのは“結果”なわけです。

彼曰く、徒手療法というのは、このような結果に対してアプローチしているからダメだといっているんですね。

では、腰痛を改善していくために必要なことは一体なんなのか?

それは、“腰痛”という結果そのものに対してアプローチするのではなく…

なぜ、腰痛が生じるに至ったのか?

という、個人の生活状態(食生活や運動習慣など)や環境状態(個人を取り巻く社会環境など)も含めて介入していくことが大切であると述べています。

受動的な徒手療法は治癒、回復のプロセスにおいてほとんど価値がない。(Lederman, 2010)

Lederman博士の主張を支持するアプローチの誕生

そして、近年このようなLederman博士が提唱する考え方を支持する理論が出てきました。

それが、『生物心理社会的アプローチ(BPS)』というものです。

BPSモデル自体は1970年代から主に精神科の分野で取り扱われていた考え方ですが、疼痛に対するものとしての先駆けは、O’Sullivanが2010年に腰痛に対して生物心理社会的アプローチの必要性を唱えたのが始まりかと思います。

O’Sullivanは、Lederman博士ほど尖ってはいませんが、徒手的治療から認知的・再教育的戦略へと治療方針の転換を強調しています。

まとめ

さて、以上が姿勢-構造-生体力学モデルに対する徒手療法の効果についてでした。

ただし、ここで留意していただきたいのはあくまでも今回述べたのは、Lederman博士の主張という点です。

ここに、それを裏付ける根拠となるような研究結果を提示しているなら話しは別ですが、そういうわけではありません。

そのため、ここまでの話しをどう解釈していくかは、最後まで読んで下さった皆さんが決めることです。

Lederman博士の提案を踏まえ、臨床の真実がどこにあるのかを日々患者様に向き合っている皆さんが判断してください。

近年PSBモデルに対する反論が数多く上がってきていますが、これに関しても現場で検証することで、現在のエビデンスに基づき、何を真実とし、何を疑うべきか、そしてどのように実践すべきかをより深く理解できるようになればと願っています。

参考文献

Is a postural-structural-biomechanical model, within manual therapies, viable?: A JBMT debate.Chaitow L,2011

PubMed
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